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ヒヒにブタの心臓を移植して、過去最高の2年半生存 異種間臓器移植での大きな進歩

発明・発見 医学

将来、心臓病の患者がブタの心臓の鼓動によって元気を取り戻せる日が来るかもかもしれない──異種間臓器移植での大きな進歩について報告する研究論文が5日、発表された。

 臓器提供者(ドナー)が極度に不足するなか、人の命を救うために動物の心臓、肺、肝臓などを利用することは、長年にわたって医学の目標となってきた。しかし、そこには、臓器拒絶反応という大きな壁が常に立ちはだかっている。

 このほど、米国とドイツの研究チームが発表した研究内容は、人間の近縁種である霊長類のヒヒにブタの心臓を移植して、過去最高の2年半生存させることに成功したというものだ。研究チームは、遺伝子組み換え技術と、標的を絞った免疫抑制剤を組み合わせたという。

 論文の共同執筆者で、米国立心肺血液研究所(NHLBI)のモハメド・モヒウディン(Muhammad Mohiuddin)氏は「これは、動物臓器の人間での利用に前進の一歩をもたらすという理由で、非常に意義深いことだ」と語る。

 モヒウディン氏は、AFPの取材に電子メールで応じ、「異種移植──すなわち異なる生物種の間での臓器移植を通じて、人の移植用臓器の不足が原因で失われている年間数千人もの命を救うことができる可能性がある」と述べた。

 ヒヒ5匹を使った実験では、移植したブタの心臓の生存状態を最長で945日間維持し、同じ研究チームが保持していた過去最高記録を更新した。

 ブタの心臓は、ヒヒの心臓と交換するのではなく、ヒヒの腹部にある2本の大血管を経由して循環系に接続された。移植した心臓は、正常な心臓と同様に鼓動した。同時にヒヒ自身の心臓も、血液を送り出す機能を継続。これは、臓器拒絶反応の研究でよく知られた手法だ。

 ドナーの臓器は、移植患者(レシピエント)の免疫系によって異質なもの、すなわち脅威として認識される可能性があり、免疫系による拒絶反応を引き起こすことが多い。

 今回の研究では、免疫反応に対する高い耐性を持つよう遺伝子組み換えを施したブタから、ドナー臓器を採取した。こうすることで、レシピエントの自然の防御システムである免疫系にドナー臓器が認識されないようになるという。

 さらに研究チームは、血液凝固を防ぐ助けになるヒトの遺伝因子を、これらのブタに付加し、またレシピエントのヒヒには、免疫反応を抑制する薬剤を投与した。

人でも安全なのか

 心臓がヒトのものと解剖学的に類似しているブタは、最適なドナー候補と考えられていた霊長類に比べ、疾病伝播のリスクが低い、成長が早い、すでに広く飼育されているといった点から、移植用臓器のより優れた供給源となるとみられている。

 この種の異種移植の臨床試験では、ヒヒが人間のモデルとなる。

 モヒウディン氏によると、次段階の重要な試験は、ブタからヒヒへの心臓の完全移植となる見通しだという。そして、「近い将来」にはブタの心臓が人体に移植されるかもしれないとも述べている。

「末期の臓器不全患者が対象のこの手法は、人への応用においても安全である可能性があるように思われる。臓器不全の患者が、異種移植手術の初期臨床試験の候補となるかもしれない」と論文の執筆者らは記している。

 今回の成果は、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された。